17世紀は、ローマ・カトリック教会がその勢力回復のために活動した世紀であった。ルターによって否定されたカトリック教会の基本的な役割の根幹 −教会における告白とその結果である悔悛によってのみ、おかした罪を赦され、人は神の恩恵を再び得ることができるという教説− を強調することに力が注がれていたのだ。それゆえに、当時は、鮮やかな色彩表現と人々の情動に訴えかける劇的な身振りによって、神の栄光とカトリック教会の勝利を暗示させるモチーフが多くのテーマとなった。その代表的作品として、17世紀シエナを代表するフランチェスコ・ルスティチとルティリオ・マネッティの作品に描かれたキリストと聖人を紹介する。

ここに描かれているのは『マタイによる福音書』からのエピソード。神殿という神聖な場所で商取引が行われているのを見て、立腹したキリストが、両替商のテーブルや鳩売りの椅子をひっくり返して、商人たちを追い出している場面である。人物の真に迫った動作やキリストの荒々しい振る舞いに唖然とするまなざしには、場面に自然主義的な描写を与えようとするフランチェスコの関心がはっきりと現れている。また場の雰囲気を劇的に表現する手法はカラヴァッジョ(1571年-1610年)の影響を物語っている。
聖ヒエロニムスは、ローマ・カトリック教会の四大教父の一人。教皇ダマスス1世の秘書であったが、キリスト生誕の地ベツレヘムに隠棲。苦行者の生活を送り、異端と戦いながら、聖書のラテン語訳を行った。ここでは、神々しい幻視を見て法悦に浸るヒエロニムスを天使たちが支えている。皺の多い聖者の四肢や天使たちの若々しい頭部は、強烈なルミニスム(明暗対比)によって造形されており、やはりカラヴァッジョの影響を見てとれる。
汝はいずれ自分を裏切るだろうというキリストの言葉を思い出しながら、裏切りに対し後悔の涙を流す聖ペテロ。キリストの弟子ではないか、とローマ人兵士たちに問いつめられたペテロは、キリストなど知らないと否定したという。ぼろぼろと涙を流すペテロの感情を強調した表情が特徴的である。