「ICIF創設の目的は、料理を通じてイタリアの産物を世界中の方々に知っていただくことです」ICIFのジェネラル・マネジャー、ブルーノ・リブラロンさんは胸を張ってこう言った。「同時に、ICIFは全国で初めての、トータルなイタリア料理学校でもあります。ご存知のとおり、実はイタリアには、『イタリア料理』というものは存在しない。あるのは各地の郷土料理だけ。以前は、郷土料理を総合的に教える料理学校がなかったんです」
 ICIFは、シェフを目指して各国から集まってくる若者たちに、最上級の食材を提供し、その素晴らしさと正しい使い方を伝授する。彼らは、研修過程で使用し、味わった食材の味を忘れることはないだろう。そして、母国へ帰った時に、是が非でもその素材を使いたいと思うはず。それが、長い目で見れば、イタリアの産業の活性化にもつながる。「おかげさまで、イタリア政府や各マスコミから、おほめの言葉を授かるまでになりました」
  ピエモンテ州は、イタリア統一の中心となった場所。近年盛んなスローフード運動の本拠地もここだし、ICIFがこの地で生まれたのもうなずける。スイス、フランスとの国境に近く、異国との文化交流も盛んな土地柄もあって、この辺りの人々には、とりわけ新しいことを受け入れる気風がみなぎっているのかもしれない。
 「ICIFはトリノで誕生しましたが、数年前、本部をコスティリオーレ・ダスティに移したのは、この城が校舎として提供されたからなんです。実はフィレンツェやナポリなども観てまわったんですが、なかなかいい物件が見つからなくて。そんな折、縁あって、こんな広いスペースを借りられることになりました。城の半分は個人の所有なんですが、西側半分は自由に使えますので、近い将来、さらに修復を進めて、2階にも新しい教室を増設しようと思っています」 しかし、コスティリオーレ・ダスティのように小さな村に、多くの外国人学生がやってくることに対して、村人たちに心理的な抵抗はなかったのだろうか?
 「正直な話、最初はあったと思いますよ。抵抗というよりは、とまどいがね。私自身ですら、若い外国人学生たちとうまくやっていけるのかどうか、確信はありませんでしたからね。でも、村の人々はすぐわかってくれました。現在では村長をはじめとして、誰もがICIFに大変好意的です。学生たちとうまくコミュニケーションがとれるよう、商店の方々を対象とした英会話教室も開かれたぐらいなんです」
  ちなみに村の写真屋さんと郵便局は、学生たちによって、思いがけぬ収益をあげることになった。料理の記録写 真や記念写真を同封した故郷への便りを送る人が後を断たないからだそう。こうした経済効果 もあって、村とICIFは良好な関係を築いている。
 現在、ICIFの学生は、日本、韓国、中国、台湾などのアジア、アメリカやカナダ、それにアルゼンチン、ブラジル、ベネズエラなどの南米が主流を占める。「ホームページを作ってからは、より多くの方々にICIFの存在を知っていただくことができるようになりました。アクセス数は1ヵ月に7万件に上っています」とブルーノさん。気になる今後のICIFの動向は?
 「実は、韓国では、本部での受講をする前に母国で通う3ヵ月間のプレ・コースを設けているんです。この秋には、上海にも学校を開く予定です。ここでは2年間のプレ・コースがあり、3学年目にイタリアで実地研修に入るというシステムをとることになっています。日本でも、このシステムが導入できるよう、準備中です。プレ・コースに通 うことは義務ではありませんが、イタリア語や、イタリアの歴史、地理、食品学などをあらかじめ学んでおくことで、実地研修の効率を良くし、いっそうの成果 を上げるのが狙いです」 日本とのつながりは、ますます強くなりそうな気配だ。
 「日本におけるイタリア料理の人気には、私も驚かされました。これが単なるブームに終らず、文化として根づいていってくれるよう、我々も協力は惜しまないつもりです。最後にひとつだけ、学生諸君に言っておきたいのは、滞在許可証など法的に必要な手続きをちゃんとクリアしてきて下さいということ。せっかくの勉強の機会を台無しにしないためにも、お願いします」