ICIFにはいくつかの研修コースが設けられているが、メインとなるのは6ヵ月マスターコース。コスティリオーレ・ダスティの本部で実技と理論を学ぶまさにプロのためのコースだ。当然、初心者の参加は難しく、生徒のほとんどは料理学校の卒業生や、母国で実際プロとして働いていた経験者だ。
 コース前半、ICIF本部で行われる60日間の授業は、効率を良くするために、同じ国の生徒を1クラス(20名前後)として行われる。各授業とも通 訳が付くので、イタリア語がわからなくても心配はない。とはいえ、イタリア料理を学ぶのには当然、語学も欠かせない。生徒たちは、月曜から金曜までの毎朝8時15分から9時15分まで、料理用語を中心としたイタリア語の授業を受ける。その後、12時のランチタイムまでは、「肉料理」「パン」「お菓子」「米料理」「ピッツァ」「ワイン醸造学」といったジャンル別 の理論と実習。シェフの実演の後、個別アドバイス、試食などが行われる。
 午後も14時から17時半まで、同様の授業。カリキュラムの内容は、季節(手に入る素材が違うため)やメンバー(国の事情によって、イタリア料理の認知度のレベルや、素材の普及度が異なるため)によって綿密に練り上げられる。そのせいか、マスターコースを2度、3度と繰り返して受講する生徒も少なくない。
  イタリア料理は、南北に長い地理的条件や、国家としての統一が比較的近年であるという歴史的条件などから、基本的に地方料理から成り立っている。ICIFでは、それらをできるかぎり総合的に教えようと極力、学習メニューにバラエティを持たせている。食材は最高品質のものしか使わない主義で、食材に関する徹底ぶりは、炒めものや揚げものにさえ、贅沢にもエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルを使っていることからも明らかだろう。流通 機構の改善で、近頃では地方の食材が比較的簡単に手に入るようになったのも、ICIFの授業スタイルが成り立っている理由だ。
  “シェフは料理さえできればいいという考えは間違っている”、これがICIFの信念である。そのため、実習授業だけでなく、イタリア料理の歴史や素材の流通 、ワインに関する授業に力を入れている。特にワインの授業は50時間もあって、ワインの醸造法に始まり、ワインと食事やチーズ、パン、オリーブオイルの相性までを学習。その間、生徒達は約50種のワインを試飲する。なんといっても、お客様はシェフの薦めるワインを迷わず選ぶ場合がほとんど。その期待を裏切らない知識を身につけることが大切なのだ。
 また、ICIFはワインだけでなく、接客術を伝授することにも熱心だ。料理を出したり下げたりするタイミングの大切さがわからなければ、厨房に立っている資格がない。味だけでなく、飲み物やサービスも含めて、トータルでお客様に満足していただかなければ意味がない。そういう思想のもと、生徒たちは毎日ランチタイムには、もちまわりで講師陣やほかの生徒たちにテーブルサービスを行う。もちろん、間の悪さや作法の間違いは、即座に講師からチェックが入る。ここでは、一瞬一瞬が、真剣勝負。
 遊学気分で参加する人に決してついてゆけない、厳しいスケジュール。前半のクライマックスは、本部でのカリキュラムを終えた後に行われる「卒業試験」。校内のダイニングルームをリストランテに見立て、クラス全員が分担して作ったフルコースを、自らのサービスで、講師、他の生徒、そしてICIFの理事やコスティリオーレ村のVIPたちに賞味してもらう。

マスターコースのほかには、1ヵ月間、2ヵ月間の短期コース、あるテーマを決めて行われる研修コース、観光と美食のコース、ワインのコース(4人限定で、苗木の剪定からブドウの収穫、醸造法までを6ヶ月間で学ぶ)などが随時設けられている。しかし、プロを目指す人々には、是非ともマスターコースを体験して欲しい。