爆走ナポリで免許取得!
Vol.17 オートマ派?マニュアル派?
 毎日のレッスン、同乗者の入れ替わりもあったが、ある時期になると特定メンバーに定まった。私より1週間遅く実車を始めた18歳のロサーリアと、他の教習所に通っていた19歳のガブリエーラが私のレッスン仲間になった。初めてガブリエーラの話を聞いた時は「?!」と驚愕。というのも彼女はすでに免許を持っているのだ。しかし、何故にまた教習所に通い出すことになったのか?

 「去年取ったんだけど、試験がめちゃくちゃ簡単だったのよ。広場をグルグル回っただけでオシマイ。2分間もなかったと思うわ。縦列駐車もバックもない、普通に走るだけなんだから私でも出来て、それで免許をもらったけど、実際には全然運転できないから、もう一度、ここに通うことにしたの」・・・・・・ガブリエーラの言葉に驚いているばかりの私に、ロサーリアも続けた。「アキ、適当な教習所はそうなんだよ!レッスンもいい加減にやって試験もちょろちょろ。それですぐ免許発行するんだから」

免許取得者、19歳のガブリエーラが私のレッスン仲間。出直しレッスンだけど、彼女の真面目な態度と運転を楽しんでいる気持ちに私も学びました。

 ガブリエーラのお父さんもお兄さんもペッピーノ氏の教習所で免許を取ったのだが、彼女は自宅から遠いことを懸念して近所の教習所に通うことにしたそうだ。そして終わってみれば免許は取れたものの運転は出来ない有様・・・・・・。免許取得の料金は同じだし、後になって家族に「あそこに行けば良かったのに!」と責められたらしい。実際、ガブリエーラの運転はひどかった。私も人の事は決して言えないレベルだが、その教習所では何も教えてくれなかったのが彼女の運転を見て分かった。

 ガブリエーラが本当に運転したいと思っていることは、一緒にレッスンを受けていて感じた。18歳のロサーリアは、「昨日、海いっちゃってさー、だから来れなかったのよ、てへへ!」と遊びのためにレッスンもお休みするような今時のギャルだったが、ガブリエーラは毎日きちんとレッスン開始10分前には教習所に来ていた。そして同じ場所で連続5回エンストしようが、対向車に突っ込みそうになろうが、楽しそうに運転して一生懸命覚えようとしていた。

 私が教官に、「どーしてイタリアにはオートマの車が普及しないんだ、簡単なのにぃ!マニュアル車だと面倒だよー!」とウダウダ言っている時も、「でもアキ、オートマはきっとつまんないよ。マニュアル車でギアチェンジした方が面白いじゃない!」とガブリエーラ。そう、彼女は運転を楽しんでいるのだ。前の教習所がちゃんとレッスンをする所だったら・・・と彼女の言葉を聞いて残念に思った。

へそピアスと足のタトゥーをしてオシャレな18歳のロサーリア。伯父さんのオートマのスマートを借りて運転する機会が多かったため、クラッチには苦労していたけれど運転はうまい。落ち着いた性格で、交差点でエンストしても慌てず再発進する。一緒にレッスン受けて彼女からも学ぶこと多かった!
 イタリアはマニュアル車ばかりである。日本は登録車の95%がオートマと聞くが、日本のオートマ率より、イタリア、ナポリのマニュアル車率の方が高いと思う。超小型車「スマート」や免許不要のミニカーの出現でオートマも出てきたがごく少数派だし、それ以外はまだまだ・・・・・・。私はレッスン開始当初から『オートマならラクなのになぁ』と思い、教官に「アキ、ギアチェンジを頻繁にするクセつけなよ。試験ではそういう所も見られるからね」と言われ、「こんな数メートルの間でチェンジしないといけないのぉ?あー、面倒だぁ!オートマチックに乗りたい〜!!」と言うと、「慣れれば手足がオートマチックになるんだからさ。ナポリでオートマの車が普及するのなんてまだまだ先の事だよ。だから自分の手足をオートマ化するようにしなさい。慣れの問題だしね!」と何度もなだめられた。

 ドライバーたちに聞けば、オートマよりマニュアル車の方が断然運転が面白いらしい。私は『面白いより簡単の方がいいの!』と思っていたのだが、ここナポリでオートマに乗るなんてまだまだ先の話だろうし、無理して買っても、家族や友人のマニュアル車を運転する時にとまどうのも困る。ナポリではマニュアル車が当然のことなのだから、もう嘆くのは止めようと、ある時にキッパリ決めた。「ある時」とは、ガブリエーラが「ギアチェンジは面白い」と言った時だった。

 運転技術的には私とどっこいどっこいの彼女でも、その『面白さ』を実感している。ならば私にもその面白さは分かるのではないか・・・・・・そう考えると、面倒に感じていたギアチェンジも『そろそろ?』、『まだかな?』と楽しめるようになった。そしてある日のレッスンで、「あれ?なんでサードに入れたの。いつもギアチェンジを言われるまでしないアキがどうして??」と教官に言われ、「手足がオートマになりかけているからよ!あ、でもまだサードまでしか自動じゃないけどね」と答えた。爆走ナポリでも運転を楽しもうとする気持ちが本当に芽生えた、とても嬉しい時だった。
   
プロフィール
アキ・ダモーレ

主婦・グラフィックデザイナー
東京出身。1991年よりイタリア在住。ナポリをこよなく愛し、人口4万のナポリ郊外の町に、ナポレターノの夫とハーフの息子と共に暮らす。イタリア生活紹介サイト「io」はほぼ毎日更新!
プロフィール
Vol.1子供には負けられない!?
Vol.2 ヴォランテ?ヴォランテ??
Vol.3 コネさえあれば免許も取れる!?
Vol.4 視力検査は事前に暗記?
Vol.5 モトリッザツィオーネ・チビーレ!
Vol.6 ナポリお車盗難事情
Vol.7 「クイズ」というと面白そうだが・・・
Vol.8 70歳のクラスメート、見事合格!
Vol.9 とにかく読む、読む、読む!!
Vol.10 免許をあきらめたシニョーラの話
Vol.11 イタリア語が話せないイタリア人?
Vol.12 いよいよ学科試験!(前)
Vol.13 いよいよ学科試験!(後)
Vol.14 10年前の記憶がよみがえる・・・
Vol.15 恐怖の路上に初挑戦!
Vol.16 日本とイタリアの大きな違い?
Vol.17 オートマ派?マニュアル派?
Vol.18 18歳のベテランドライバー?
Vol.19 ムッツリ教官のスパルタレッスン
Vol.20 試験直前の猛特訓
Vol.21 いよいよ試験当日!
Vol.22 ついに念願の免許取得!(最終回)
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