片側一車線しかない道路とは言え、かなりの交通量のある場所からの発進。しかも教習所の生徒たちが大勢見つめる中をスタートしなければならない状況になり、極度に緊張し2回連続エンスト・・・・・・。教官も同情してくれたのか、3回目はクラッチを助けてくれ、なんとか発進OK、生徒達も大人しく教習所内に入っていったが、あの後、どんな会話がなされたか、恐くて聞いていない。でもそんな事はおかまいなし!もはやスタートよりも『あそこの交差点をどうやって曲がればいいのだろう?』という不安が大きくなっていたからだ。
双方とも片側一車線ながら交通量の多い交差点。優先権は存在していても誰も守らないので、強気で突っ込む人が先行する。『私は強気になれないから、一生あの交差点に留まることになるんじゃないか?』と不安が一気にわき上がってきた。でも『AUTO
SCUOLA(教習所)』と大きな看板を掲げた車に乗っているので、親切にも停車して私に優先権をくれる人もいる。が、しかし、交差点では左右から車が来て、前方からの車も右折する場合は私と交差するので、そんな親切な人が3カ所にいない限り私は通行できないのだ。例えば、左の人が止まってくれても、右と前方から来る車が突っ走れば、私は停車のまま・・・・・・待っていてくれた人も、その内しびれを切らして通行していく。「うわー!私はここを一生曲がれないよぉぉ!!どうすればいいのぉぉ!!」と叫び声だけは激しいが、いつまでも突っ込めずにいる。スタートしようとしてもエンストしたり・・・・・・。泣きたい気持ちになってきたが、教官や後ろに座る仲間の声援に助けられ、どうにか左折することに成功。曲がった後は大汗をかいているのを実感していた。
普通の走行はなんとか出来ても、交通量の多い交差点ではドキドキして大汗・・・・・・。『なんで私はこんなに交差点が苦手なんだろう。日本ではこういう場合、どうするのかな?』と、ふと思った時、日本とイタリアの、素朴な、でもとても大きな違いに気付いた。いや、日本とイタリア・・・というよりは、先進国とイタリア南部の違いと行った方が正しいかもしれない。そういう交差点には、普通だったら信号があるのだ。だから行き交うたくさんの車があっても問題なく走行できるのだ。しかし、ここには信号がない!だから初心者は苦しい思いをしないといけないのだ!
翌日のレッスン時に「信号がないからこんなにメチャメチャな交差するしかないのよ。あそこには信号が必要なのよ!」と言うと、「アキ・・・・・・それは話すだけ無駄だよ」と教官はうなだれながら答えた。「ナポリで信号の話をするなんてアキしかいないよ」とも。
イタリアでローマ、ミラノに続く3番目に大きな街であるナポリだけれども、市内にも信号は多くない。以前は信号はあっても壊れている方が多かった。それに信号を守るという精神はナポリ人には皆無。私がかつて勤めていたミラノの雑誌社の社長が、「ナポリにはもう二度と行きたくない。赤信号で止まっていると後ろからクラクションを鳴らされて『何、止まってんだよ、このヤロー!』と怒鳴られるんだから!」と嘆いていたが、それは決して冗談ではなく、日常茶飯事のこと。
ナポリサミットの前に当時の市長の手腕で、ナポリ美化と道路交通整理が行われ、壊れていた信号は修理、新たな信号も設置され、赤信号では止まらないといけない・・・という意識改革も行われたが、それでも信号を守らないドライバーはまだいるし、ナポリ人にとっては信号は『なくてもいいもの』という感覚だろう。そんなわけで、ナポリ市外の我が町にも信号はたった1カ所、高速道路の出入り口の交差点にしかない。他にも数カ所あることはあるのだが、壊れてはいないが、双方とも点滅黄色になっており、信号の役割を果たしていないのだ。
それから、今更ながらにドライバーたちのマナーの悪さにも辟易した。ウインカーをつけないのは当たり前。対向車がいようが後方車がいようが、いきなりバックやUターンをする車が多いし、20分程度のレッスン中、一方通行の道を逆走する車に必ず2回は遭遇した。ウロウロするスクーターの若者も危ない。ある時など、前方を走っていたスクーターが数メートル前でいきなり道路と直角に、道路の真ん中で停車。あまりに近く、あまりに突然のことだったので、私は急ブレーキをかけたのだが、その若者は、その道路沿いのマンションに住む人に声をかけられ止まってしまったのだ。友人だったのだろう。しかし、脇によって停車すればいいものを、わざわざ道路の真ん中に華々しく直角カーブして停車・・・そして後続の車の全てを滞らせる。それでも彼はマンション住人と気軽にお喋りをしているのだ。しばらくして後続の車たちから激しくクラクションを鳴らされ、数分後にようやく位置を正してスタートしていった。
信号はないし、優先権や規則はあってないも同然だし、こんな野放し世界で運転しようと決意したことを一瞬後悔したが、一度始めてしまった以上、最後までやり遂げないと!! その気合いと意地だけでレッスンを続けていった。
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アキ・ダモーレ
主婦・グラフィックデザイナー
東京出身。1991年よりイタリア在住。ナポリをこよなく愛し、人口4万のナポリ郊外の町に、ナポレターノの夫とハーフの息子と共に暮らす。イタリア生活紹介サイト「io」はほぼ毎日更新!
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