外国人仲間が口頭試験をクリアしたので、それからは私一人を対象にした特訓が受けられるかな?と期待いっぱいで教習所に行くと、ペッピーノ氏は他の2人のイタリア人女性も呼んでお試し口頭試験を開始した。どうしてイタリア人が口頭試験なのだろう?と不思議に思ったが、一人は70歳のおじいちゃんの時と同じで、免停再試験のための試験だったのだ。もう一人のシニョーラもきっとそうだろうと思っていたのだが、レッスンを受けて『そうではない』と確信した。彼女は先生の質問に何も答えられなかったからである。
「私はね、8年前に教習所通いをはじめたの。でも途中で諦めちゃってさ」とのことで、「どうして諦めたのですか〜?」と聞いたら、「だって、私、頭悪かったから!!」と・・・・・・。あまりにストレートな回答にフォローもできずにいると、シニョーラ自ら説明を始めた。「口頭試験にも行ったのよ。でも、質問されて分からなかったから立ち上がって出てきちゃったの!それで終わり。だから今回もう一度チャレンジしようと思って」ということだった。でもいったいどうして100%イタリア人のシニョーラがクイズではなく口頭試験なのか、数日一緒にレッスンをうけていたらその理由が判明した。彼女はイタリア語ができないのである。
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| イタリア語ゼロ!!ナポリ語のみで行われたドタバタ特訓。当のシニョーラはプライバシー保護のために顔かくしてます(笑) |
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イタリアは小さな国が集まってできた共和国で、ずっと大昔はそれぞれ違う言葉を使っていた。現代イタリア語はトスカーナの言葉を標準としたもので、ナポリの言葉とはだいぶ違う。ナポリの言葉は『オーソレミオ』や『帰れソレントへ』等の歌詞で世界的に有名だが、あの歌詞はイタリア語とは違うナポリ語なのだ。もちろん現在は学校で標準イタリア語を習うが、家族や友人間ではナポリ語で話すことが多いし、小学校しか出ていなかったり、中学に行っても学業を疎かにして卒業までにイタリア語を身につけられない人も少なからずいる。私の主人は旅行代理店を経営しているが、アルバイト募集をする時の条件は『イタリア語が話せること』だったりする。ナポリだってイタリアの一部なのに、イタリア語を話せない人もいる・・・・・・オカシナ話のようだが、紛れもない事実だ。
そんなわけでイタリア語をちゃんと理解することのできないシニョーラはクイズではなく、口頭試験を受けることになった。お試し口頭試験もイタリア語ではなくナポリ語で行われるようになってしまった。そのシニョーラは言葉の問題もあるが極度の上がり性のようで、必死になって『イタリア語』で覚えた標識の名前も、すぐに忘れてしまう。ペッピーノ氏に「これは『駐車禁止』ですよ、分かりましたか?」と言われ「はい!」と元気よく答えるものの、その後すぐ「この標識は何?」と問われると「ええとぉぉ、あああ、もう忘れたぁぁ!!」とパニックになる。それにいつも右と左を間違えるし、さすがのペッピーノ氏も「シニョーラ!どーすりゃいいんですか、もう!!」と毎回叫んでいた。
そのシニョーラとペッピーノ氏のやりとりを聞いてるとドタバタ漫才のよう。ペッピーノ氏は彼女の特訓にかかりきりになってしまい、私への質問は毎日5分程度・・・・・・。これでは毎日大爆笑するために教習所に通っているようなものだ。「このままじゃいつまでたっても試験受けられないじゃないのよ!!」と憤りを感じながらも、外国人ではなくイタリア人がイタリア語に悩む現場に遭遇してしまうなんて、やっぱりナポリの教習所はいろんなことが起こるなーと、しみじみ感じ、教習所通いがまた楽しくなった。 |
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アキ・ダモーレ
主婦・グラフィックデザイナー
東京出身。1991年よりイタリア在住。ナポリをこよなく愛し、人口4万のナポリ郊外の町に、ナポレターノの夫とハーフの息子と共に暮らす。イタリア生活紹介サイト「io」はほぼ毎日更新!
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