| イタリアでも18歳から乗用車の免許が取れるので、教習所の仲間は若者が多い。午前中のクラスは年齢層が高いと言っても、平均20代中半。6月に40歳になる私が最年長だったのだが、ある日、もっともっと年長の仲間が増えた。白髪のお爺ちゃん・・・・・・どう見たって65歳以上であることは確かだ。 |
 |
| もちろんこのお爺ちゃん、免許取得にチャレンジするのは初めてではない。大事には至らなかったようだが事故を起こしてしまい、免停処分を受けたのだ。もう一度免許を取り戻そうと思ったら、学科と運転の試験をやり直さないといけない・・・・・・そういうわけで、お爺ちゃんが仲間入りしたのである。 |
 |
「俺はペッピーノ(教習所経営者)がガキのころから知っておるわい」というお爺ちゃんの年齢は70歳。「子供の時によくしてやった俺を、今、こうしてイジメルなんてひどい話だよなー!」と嘆きながら授業を受けていた。免許を取ったのは50年前なので、運転はうまいし一般的な規則も知ってはいるけれど、50年前と今では交通規則の数が比べ物にならないほどに増えている。その勉強に四苦八苦だ。
学科は口頭試験なので、面倒な引っかけ問題満載のクイズの勉強はしなくていいが、覚えなくてはならない事項がとても多い。「教科書は読むよ、ちゃんと読んでるよ。でもね、読んだらそのまますっかり忘れちゃうんだよ!」とお爺ちゃん。40歳になる私が、暗記力の低下をひしひしと感じているのだから、70歳のお爺ちゃんが『読む、即、忘れる』という図式になってしまうのは、心にしみるほど、よく分かる。
そんなお爺ちゃんのために、ペッピーノ氏は特別な作戦に出た。免停の試験は、取得の試験と違って大まかに要点だけ質問されることが多い。そこで熟練のペッピーノ氏は、毎日お爺ちゃんに根気よく同じ質問をし続けたのだ。本当に毎日、同じことばかりを繰り返し・・・・・・。そうすれば、いくら暗記力の低いお爺ちゃんでも覚えるようになる。そんな特訓を10日ほど続け、どんな質問にもなんとか答えられるようになった時、「よし、じゃ明日8時に来てください」とペッピーノ氏のゴーサインが出た。次の日、お爺ちゃんは見事、免停者のための学科試験に合格!実地試験も軽くクリアして無事免許証を再び手にした。おめでとう! |
 |
| 「ペッピーノがイジメルぞ〜!」と文句を言っていたお爺ちゃんだが、子供の頃からお世話になっていたペッピーノ氏は、ちゃんと彼のことを思い最適な方法で合格まで導いた。その親切を、もちろん最後にはお爺ちゃんも理解しただろう。 |
 |
| それにしても70歳を過ぎて元気に運転するのも驚きだが、私がもっとビックリしたのは、お爺ちゃんが自分の車を運転して教習所に来ていたこと。免停なのに運転を・・・・・・そしてそれを誰もとがめない・・・・・・。さすが、ナポリである。 |
| |
|
|
 |
 |
 |
 |
アキ・ダモーレ
主婦・グラフィックデザイナー
東京出身。1991年よりイタリア在住。ナポリをこよなく愛し、人口4万のナポリ郊外の町に、ナポレターノの夫とハーフの息子と共に暮らす。イタリア生活紹介サイト「io」はほぼ毎日更新!
|
|
|