イタリア人入門
第8弾 アニメ・マンガの翻訳家、エドアルド・セリーノさん「忍者になりたかった、なりきり青年」
第8弾 アニメ・マンガの翻訳家、エドアルド・セリーノさん
今回お付き合いいただいたのは、アニメ、マンガの翻訳家、エドアルド・セリーノさん。メジャーな作品には、テニスの王子様(漫画)、鋼の錬金術師 (漫画)、ブラックラグーン(漫画とアニメ)、ナルト(漫画)などがある。

彼が生まれ育ったのはトスカーナ地方の小さな町。当時日本人は1人しかいなかったそうだが、そんな環境で日本に興味を抱くようになったきっかけは、日本のアニメとマンガ。5、6才の頃からすっかり魅了されていた。

どれくらい日本アニメを知っているのかと、私が幼いころに見ていたアニメを列挙してみた。“忍者ハットリくん”“ドラエモン”“キャンディーキャンディー”“Dr.スランプあられちゃん”“キャプテン翼”。なんでも知っていた。中でも“キャプテン翼”はサッカー大国イタリアだからか大人気だそうだ。逆に“サザエさん”や“アンパンマン”のような日本文化を知らないと理解できなそうなものは放送されていないらしい。

なんでも子供の頃に“アメリカン忍者”という映画を見たことがきっかけで忍者に憧れ、忍者になるべく始めの一歩として“空手”を習い始めたエドアルド少年。小学生の頃はおもちゃ“しゅりけん”を買って忍者修行に励んでいたという。20歳で初めて来日するまで、なんの疑いもなく“忍者”という職業があると思っていたらしい。“忍者”になりたくて日本に来たと真顔で言うのだ。

そんな彼に「結構思い込みが激しいというか、自分自身がファンタジーの中に入れちゃうんですね。だから忍者の存在を疑うこともなかったのでしょうか?」と投げかけると、「そうかもしれないですね。アニメの翻訳をするときも、すぐにその世界に入り込んじゃうんです。セリフをしゃべっている役になりきっちゃうんですよ」と。

翻訳作業は辞書と睨めっこし、わからない情報はネットで調べるといった地味な作業だと思っていた。でも意外に役者的“なりきり能力”が役立っているのかも。登場人物の感情の変化を繊細に表現する必要のあるアニメ翻訳。“登場人物になりきる”ことで適切な言葉が浮かんでくると彼は言う。

アニメ・マンガの翻訳者になるのに、どれだけ日本語を学んだのか、専門の学校には行ったのかは気になるところ。それが驚いたことに日本語学校で学んだのはわずか1年。翻訳業務は独学のみ。日本に何年も住んでいて日本語ができるイタリア人はたくさんいるけれど、このような特殊な翻訳ができるか否かは、その“なりきり能力”、“瞬時にその世界に入り込める集中力”にかかっているようだ。

その“瞬時に世界に入り込む”ための“集中力”と“瞬発力”を培ったのが、イタリア在住時代から学んできた“空手”。イタリアではそこかしこに“空手”、“柔道”、“合気道”の道場が存在するらしい。前回のパオロさんにしろ、エドアルドさんにしろ、イタリアで日本の武道を習い、そこで培った力を自分の生き方に役立てている。灯台下暗し。日本古来の武道を優れた文化として身近に感じることができた。
バックナンバー
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プロフィール
岩波えり子
「日本人は電車の中でだれも話しかけてくれない」という、あるイタリア人の言葉が印象に残る。
イタリアの電車の中っていったい?澄みきった青い空、おおらかな人々、おいしい料理に漠然と憧れるイタリア関連超素人。
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