イタリア人入門
第5弾 NHK教育テレビ「イタリア語会話」、NHKラジオ「イタリア語講座」でもおなじみの、モニカ・ブレッサッリアさん その2
日本では、なにかと肩身の狭い立場にある“フリーター”。でもモニカさんによると、イタリアでは、30歳過ぎるまではフリーター(アルバイター)(※)が当たり前というではないか!?新卒で就職できる人なんてごく一握り。エンジニア等、すぐに仕事で役立つ勉強をしている人は例外として、たいていの新卒者は“経験のない使えない人”とみなされ、逆に30歳くらいまでいろいろなアルバイトをしてきた人がその経験値をかわれてようやく就職できるという現状らしい。

「イタリアでは、大学と仕事の結びつきが少ない」とモニカさんは言う。日本のように、就職課が定職に就くお手伝いをするなどということはもちろんなく、大学はあくまで勉強をする場所。就職活動を始めるのは卒業してから。勉強の内容は、仕事に直結しやすい実践的なものではなく、概念的、理論的なものが多いらしい。勉強はすごくハードで、モニカさんが学生だったころは、4年間で卒業できる人なんて皆無に近かったという。

これだけ聞くとイタリアの大学生は、勉強は大変、卒業後は就職困難、という辛い現実だけが待っているように思える。でも彼女が、目からウロコなイタリアならではの事実を教えてくれた。なんと、「試験を受ける日を自分で決められる」。つまり、今年の授業の試験を来年にまわしても、再来年にまわしてもかまわないというのだ。“自分のペースでどうぞ”ということらしい。しかも、4年で卒業しなくても留年とはみなされない。

日本の大学の場合、泥縄でもなんとか単位を取得し、よっぽどのことがなければ4年間で卒業をする。その後は苦労や我慢、暗中模索はあるにしても、なんだかんだ大概の新卒者は就職口を見つけている。しかし、就職活動は大学3年生の段階で始まり、まだ卒論も書き終えていないというのに、自分がどんな仕事がむいているのかもわからないまま、やみくもに面接を受けまくったり、受かる履歴書のノウハウ本などを読みあさったりしている現状もある。

イタリアがうらやましい。卒業後はアルバイト生活で経験を積むのが当たり前、留年の心配もしなくて良い、というわけだから、考えてもしょうがない先のことなど気にせず、今ある自分の興味対象分野にじっくりと向き合える気がするのだ。卒業後には、30歳過ぎるくらいまで、自分のやりたいことをどんどんチャレンジできる堂々たる道がある。シンプルに自分の道を模索できる(もっともイタリアの学生は、すぐにでも安定した職に就きたいと思っている)。

日本にいれば、アルバイト生活が長くなれば長くなるほど社会から取り残されたような不安感が大きくなっていく。やりたいことを追求したくてアルバイト生活を送っていても、歳をとると就職が困難になる日本では、20代後半くらいで、やりたいことを断念して就職するか、なにがなんでも今やりたいことで企業に頼らず生きていくかの決断に迫られることが多い。でもイタリアなら、どのみち正規雇用が稀なわけだから、「経験を積んでステップアップしている」と思えるか、定職に就きたい人であれば、「今があるから未来に安定した職に就ける」と思えるか、どちらにしても前向きな気持ちを維持できることだろう。

社会のペースに追い立てられることなく、自分に合ったスピードで、自分に合ったものを追求していけるイタリアの環境は、モニカさんのように自らの人生を切り開いていける、たくましい人を育てるのかもしれない。

(※)フリーター(アルバイター)…イタリアでは日本でいうフリーターやアルバイターに相当する言葉は存在せず、未来を約束されている終身雇用なのか、期間限定の契約雇用なのか、業務委託なのか、時給制なのかと、事実上の待遇に違いはあるが、どれも仕事がある人という意味において差別的な概念はない。
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プロフィール
岩波えり子
「日本人は電車の中でだれも話しかけてくれない」という、あるイタリア人の言葉が印象に残る。
イタリアの電車の中っていったい?澄みきった青い空、おおらかな人々、おいしい料理に漠然と憧れるイタリア関連超素人。
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