FOOD インフォメーション
包丁式と日本料理の披露――ローマ  
[2005/6/15 up]
バロック建築内で平安朝の包丁式―――――

「まるで遠い昔の宮中にいるかのような錯覚を起こさせる」とイタリア人ジャーナリストたちを酔わせたのは、5月27日、日欧市民交流年の一環としてローマで行われた包丁式。平安時代より宮中や貴族の食餐の際に行われ、包丁刀と呼ばれる長い包丁とまな箸(盛り付けなどに使われる長い箸)を使い、直接手で触れることなく魚をおろす儀式で、今や日本でもなかなか目にすることのない珍しいものだ。包丁人は第一ホテル東京「三田」料理長の米良隆氏、持ち出しの儀は「新宿中嶋主人」中嶋貞治氏、祖衣の儀は食品卸会社経営の鹿野雄二氏によって行われた。
この日は「藻がくれの鯛」というおめでたい型が披露された。菖蒲の花がまな板の上に置かれ、扇より金色の紙片が魚の上に振り撒かれた瞬間、会場全体はまさに平安の昔に引き戻されたかのような雰囲気に包まれた。
この日会場となったローマ市所有のサンタリータギャラリーは、カルロ・フォンターナの設計したすばらしいバロック建築で、優雅かつ荘厳な舞のようにさえ感じられた包丁式との取り合わせは見事。両者の美しさが引き出され、独特の空気が漂う夢の世界の出来事のようであった。

テアトロ形式による日本料理の披露―――――

続いて5月31日には、ガンベロロッソにて、包丁式と日本料理が披露された。一日だけの開催に定員88名のところ、どうしてもというお客様を受け入れ会場は100名を越える大入り状態。
この日は食雑誌の分野でNo.1のガンベロロッソの提唱する、「テアトロ(シアター)」と呼ばれるショー形式で行われた(単に料理を味わうだけでなく、厨房にカメラを入れ、ステージ上のスクリーンにどのように作られているかを映し出し、シェフの解説を加える)。
日本料理の代表的なテクニックの桂むき、網切り、笹切りなどが披露され、日本の料理人たちの技術の高さに感嘆の声が上がった。また盛り付けの紹介では、日本から運ばれた器の美しさと、日本的盛り付けの感性にため息がもれた。最後の料理が終わった後も席を立つ人はおらず、8名の中嶋厨房のメンバー全員に大きな拍手が沸き起こった。

阿吽の呼吸・ジジ―――――

この包丁式などの模様は読売新聞(ヨーロッパ地方版)、イタリア全国紙IL GIORNALE、イタリア国営放送Raiでもニュースとして取り上げられ、大きな話題となった。しばらくは食通の間で日本料理の真髄について語られる機会が多くなるに違いない。すべてはたった一度だけの日本料理披露ために、中嶋氏、米良氏による下見訪問など、十分過ぎるほどの準備があったからに他ならない。そして何よりガンベロのシェフ、ジジの存在が大きい。早朝、雨降りの中の魚屋や市場訪問、キッチンとすべてに必ず同行し、手を貸してくれた。言葉や宗教を超え、料理を愛する者だけが解り合うジジと中嶋チームの阿吽の呼吸であったともいえるだろう。

レポート:長谷川由美
ローマ在住17年。DO COMMUNICATION文化協会共宰。インフィオラータ、試飲会など、食の分野の日伊文化交流に力を入れる。ソムリエであり、チョコレートマスターでもある。
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